この度の新型コロナウイルス感染拡大防止のための都市封鎖により、当プロジェクト支援地でも綿花栽培に深刻な影響がでています。
通常ですと収穫された綿花は2月から4月にかけてジンニング工場に入り、そこで農家は収入を得ることができます。しかし今年は綿花の収穫自体が遅れていたことにくわえ、都市封鎖の影響でジンニング工場が3月から操業を停止してしまい、農家が収入を得ることができなくなってしまいました。ここで得た収入をもとに、次年度の種を購入し綿花栽培が始まるのですが、今年は種の購入がままならない状態がつづいています。
この事態をうけ、現地NPOチェトナオーガニックより、従来の有機農法への転換支援、こどもたちの就学・奨学支援に加え、種子の購入支援の要請がありました。そこで当財団では理事会の中で協議し従来の2020年度基金拠出に加え、2000人の小規模農家にむけての種の購入支援として1,300,000ルピーの拠出を行うことを決議いたしました。
今回の支援の状況については、現地NPOとも連携しながら、財団ウェブサイトなどをつうじてご報告させていただきます。
●財団より補足 綿花の種の栽培について
綿の種は専門農家が栽培します。その主な理由は、
・種は売物なので発芽しなければならない
・綿の品質を維持しなければならない
ということです。
生物の世界では近在種同士のかけ合わせは遺伝上に問題が出る可能性があり避けています(近親交雑の問題)。種のかけ合わせには高度な知見と経験が要求されます。インドでは非遺伝子組み換え綿花の種は大学などの研究機関が種のかけ合わせを実施したり保管することで品質の継承をしています。そこから種が協同組合などを経て農民の手元に届く仕組みです。
ジンニングで余った種を蒔いても発芽率が異常に低かったり、品質が低下することが予想されるために農業を生業とする農民や繊維企業は余った種の利用はしません。
インドの綿花農家には2種類の農家があります。純粋にワタを生産する普通の綿花農家と種用のワタを栽培する農家“Seed Cotton”農家です。Seed Cotton農家は遺伝子組み換え用の種の生産をするために、花が咲いている期間は受粉作業に明け暮れます。1本の木でたくさんの種をつくるために背丈が高く綿花の数も多く作られる綿は、受粉作業期の農家の労働は休みなく続きます。労働者も雇用するため労賃を抑える必要があり安価な労働力として児童労働の温床となるケースが多いです。
種ワタ栽培は貧しく保護者の教育が行き届いていないエリアで多く見られてます。インドでは他に産業の無い中南部や中東部が多いといわれています。種業者は手付金などを使い農家に取り入ってむりやり種ワタ栽培農家を増やしていることが多いといわれています。
今回の支援では品質が安定している、非遺伝子組み換えの種をチェトナオーガニックを通じて調達し、農家に負担がかからない形で種の提供を行います。